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波をこえて

2012年02月28日

愛する皆さん、こんにちは。

さて、無事私は日本円を換金する事が出来たのでしょうか。
一番近い銀行まで、船で一晩はかかるこの地域で、カードも日本円も役に立ちません。

伐採地あとの浜辺には何本かタコノキがたっていて、水辺の植生を取り戻そうとしてます。淳くんはボートで待って、事情もよくわからないまま、船員と身振り手振りで話しています。一時間くらいそうやって待ったでしょうか。確かに沖の方の波が高くなっています。

しばらくして、本部から連絡があったと会計士が呼んでくれました。そして交渉の末、日本円をキナに換えて手持ちのキナとあわせ、1000キナ用意する事が出来ました。

腕に立派な入れ墨のある中国系マレーシア人の会計士は、まだ20才くらいの青年でした。私は簡単に彼をスケッチしてプレゼントしました。とたん、子供っぽい笑みをうかべ握手でわかれた。彼もまた、この宇宙船地球号の乗組員仲間です。

スキッパーと一緒に一枚ずつ数え、ところでこの波は大丈夫かと聞きます。彼は任せとけという表情で、

「はやいとこ行こう」

とだけ、ピジン語で言いました。

ディンギーに乗る時は、船の中央にあるすのこに荷物をのせ、それをビニールでくるんで海水から守ります。その荷物を背もたれにするようにして、すのこの前に私と淳くんは座りました。


今思えば、あのときはもう少し準備をするべきでした。救命胴衣も、錨もない船です。波の高い海峡は以前にも他の所で経験していて、油断すると危ない物です。一度は日が暮れる前に対岸につかず、簡素な錨をおろして、海の上で一夜を明かした事もある。

今回は、他にまともな乗客のいないハイヤー便です。燃料も運転手も私がまかなっている。もう少し、言える事があったはず。しかし、早くあの村へ行きたい。その思いが私を駆り立てていました。

最初、それほど波は高くなかったのです。しかし珊瑚礁を離れ、沖へ出ると様子は一変しました。波は5〜6mはあり、波頭から波頭へとボートは飛んで行きます。船外機のプロペラがちゃんと水面をつかんでいるのは、どのタイミングでしょうか。砂丘の次の丘をみるようにして、ただ、山から山へと海の道を切り開いて行きます。

ドン、ドン、ドン!

山の頂上を船底が叩くたびに、強い衝撃と音が響きます。
海水は私たちを洗い、船底には少しずつ水が溜まります。

私はとっさに、瞑想状態になって、感覚をクリアにしました。
ただでさえ寡黙な淳くんは、さらに静かになりました。
海は広く、まるでボートは波間に揺れる木の葉のようです。

あのスキッパーは立派でした。
あの航路で、ためらいや躊躇があったなら、いま私はこうしてこの通信を書いていないかもしれません。

一時間半か、二時間か。
眼鏡はしぶきで役に立ちません。

常に船首を波頭に立てなければならない時化の中、よく対岸に向かえたなと思います。

この時期、雨期です。ようやく、タラウェ山が見えてきました。
雲がニューブリテン島を覆っています。
静かにここまでこられた全ての導きと、海の神、山の神、空の神に感謝の祈りをつぶやいていましたが、体はまるでボクシングを戦ったかのように、全身に痛みを感じていました。

リーフの中に滑り込めば、波はおだやかです。

懐かしいものがみえます。

私がかつて成人の儀礼を受けた精霊堂の影です。キラゲ村は、キラゲ、オンガエ、ポートネ、三つの集落から成っています。あの影は、間違いなくポートネの精霊堂です。


リマは「村も変わったわよ。発電機もあるし、今は月一だけど貨物船も来てる。ケイはがっかりするかもね」と言っていましたが、なにも変わっていない。火山を背に持つ村は、黒い砂浜のうえに穏やかに、ありのままに。

人影がみえて、ようやく言葉が出ます。「パプエンガタ!」
村の言葉で、「良か、良か。」というような意味です。

「オー、ケイ、ケイ、ケイ。来たなあ」
知っている顔が浜にいます。皆がボートを引き上げ、スキッパーに礼をいい、荷物を運び出してくれます。

疲れは一気に吹っ飛び、私は陸に上がり、皆の顔を見ます。
「十年だよ!始めてここに来た日から。」
そういって、兄弟達と抱き合いました。
「ああ、十年だ。」

しかし、まるで昨日帰った友を迎える様な淡々とした佇まいの家族達。

「ケイ、まずは体をあらって、やすむといいよ。この波の中、今日来るとは思わなかったよ。」

そう声をかけられながら、私たちは川のほとりへと歩きました。
村のみんなは、小型ボートの船員達をねぎらい、村の食事をわけていました。年下だけど叔父にあたるマーティンや、ガブリエルと同じ母親をもつアイサポと肩をならべ、ここまで1000キナもとられたよと話すと、それはぼったくりだろと笑ってくれます。

潮まみれになった服を脱ぎ、川の真水で体を洗います。
やっと、ここまで来た。

そして、すぐに私たちは高床式の家の一部屋に入り、そのまま眠りへとつきました。ピジンの言葉で、休む事を「マロロ」と言います。

「マロロ パスタイム」(まずはやすめ。)
「マロロ グッド」(よくやすめ。)

村のみんなの、その声を聞きながら、風の中でやっと私たちは目的地に着いた事を感じたのです。

おじいちゃん

今日は、このへんで。
これから、村の生活がはじまります。
よかったら、また旅の記録をシェアして下さい。

今日も宇宙にみちる愛とともに。
ワールドピース

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