インド旅行記5

スケールの違いで、同じ物が全く違った表れ方をするのをご存知ですか。たとえば、地球。宇宙からの画像でみる地球は、とても青く、有機的で、美しく調和しています。大気圏からの視点にスケールを移すと、幾何学的な都市の造形が見え出し、そこには人間の思考が見て取れます。さらに、スケールを地上に戻すと、そこには見慣れた人間の姿があり心も感じられます。

 

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(異国の地で国営放送のインタービューを受けるのも、あるスケールの地球のワンシーン)

 

この見慣れた感覚から自分を解き放ち、様々なスケールで物事を捉え直すことを楽しむ時間は、人生を豊かにします。

 

アートや旅はその機会をたくさん与えてくれます。

街の喧騒から離れて、レネアの滝を見に行く機会がありました。

 

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そこは、何億年も前の巨大な火山の火口で、純粋な花崗岩が切り立った地形をつくりだしていました。

 

わたしは、時間のスケールをこえて地球と人々のつくりだした文明を旅します。空間にも時間にもスケールを縦断する想像の旅をするには、いくつかのコツがあります。20年ほどかけてわたしが会得したコツを今日は特別にお伝えします。準備ができている人には、有用だと思います。

「大まかにみる心。先人たちが調べてくれた情報をある程度は集めておく知恵。一つのスケールに止まらないこと。ディティールを想像すること。重箱の隅をつつくような思考が動き出したら、想像の旅を一度手放すこと。目の前の事物を、同じ想像力をもってみること。その想像の素晴らしさを十分に体験しながらも、決してとらわれず、新たな視点の可能性をいつも開いていること。」

そうやって、乾期ですっかり干上がった滝壺をながめ、地球と、インドの大地としばし会話を楽しみます。

「偉大なるイリュージョン」

そういう声と笑い声が聞こえてきていました。

 

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地球の上で、さまざまな営みがあり、さまざまな文化が生まれ、色とりどりのそれらが、混じり合って、いくつものレイヤーが重なるようにして、新しい絵になり、拡散し、消え去り、また、生まれ。

古代においてインド、そして中東で生まれたものが、洗練され、薄められて、今、私たちが住んでいる列島に届いていく様子が感じられます。
わたしは、現代的な材料をつかって絵を描いていますが、そこにある美意識は、伝統的なものかもしれないと思っています。材料や技法が伝統的であることで、日本特有の絵画を生み出すことも大切ですが、技法や材料がかわっても残り続けるなにかがあるならば、それは、本質的なものかもしれない。そういうチャレンジがわたしの制作のなかにあります。

その美意識にのなかに、遠い遠い昔、インドから届いてきたなにかも、今のわたしの絵のなかに流れているのかもしれません。

今回、わたしが展示していたのはこの4点の絵画でした。

 

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先入観なく絵と出会ってもらい、絵の前で長く立ち止まるひとに話しかけて、すこし感想を聞きました。戸惑いよりも、絵から受け取られる美しさの感覚を素直に話してくれる方がとても多かったことが印象的でした。

そして、驚いたのは、ある記者の方が、短くインタービューをさせてくれと言われ、わたしはなにも説明していないのに、「瞑想についての考えをお聞かせください」と質問されたことでした。絵だけをみて、それが、瞑想によって得られる感覚を背景にしていると、理解してくださったわけです。

インドには、健全な精神文化がいまも実際的に息づいている。そう感じる一瞬でした。

しかし、わたしはまだこのとき、思い出せないでいた一つの言葉をぼんやりと感じていて、なにか釈然としない心地だったのです。

それは、また次回。

今日も、宇宙に満ちる愛とともに。

ワールドピース!