アートストールが出来るまで

10年間、数え切れないほどの個展を開催してきました。本当に多くの人が見に来てくださいました。
目を閉じたら、ほら、あなたのことも思い出せます。

そして少なくない数のひとが「この絵のような服を纏えたらどうだろう!」という声を上げてくださいました。

みなさん、私の絵が生まれる背景をしらないでしょう?
簡単にスイッチを押すように、次から次に絵は生まれてくるでしょうか。
いえ、そうでもありません。なかなか準備に時間がかかり、素材の性質を知るのにもたくさんの研究が必要になります。

ですから、「アーティストなんだからなんでも出来るでしょう?服をつくって!」と、言われても、私に縫製の専門知識はないので、そう簡単には作られません。ものづくりにおいて、「専門」ってこと、意外と大事なんですよ。

でもね、ものづくりが大好きだから、時間さえあれば、服のことも研究したいと思います。
自分で楽しむぶんには、ちょこちょこと作ってみたりもしています。
でも、ストールならどうだろう。ストールなら、私のアートをそのままのせたタペストリーのように、製品を作られるかもしれない。
そう思ったのが4年くらい前だったでしょうか。

私はさっそく、車で服飾産業の中心地であった岐阜に向かいました。
なんのあてもなかったのですが、そこで、加藤繊維の森親子に出会い、画家が個人として、小ロットのストールを作りたいという話をちゃんと受け止めてくださったんです。布は見つかった。次は印刷だ、と思い、インターネットでいくつかの会社をあたり、電話口で、話を理解してくれそうな町工場をみつけ、両国へと飛びました。思い出すと、あの頃はずいぶん移動に思い切った経費をかけて、あちこち行ったなあと思います。わたしのアートは不定形の滲みがとても重要な要素となっています。そのせいで、微妙な色の変化を正確に布に落とし込む技術がないと、ただのカラーコピーのように魅力の薄いものになってしまいます。布になったときに、作品として飾ることも出来るような品質をめざして相談できる二つのちいさな会社を見つけることができて、小ロットの生産にも特別に対応してくれることになったので、ストールプロジェクトは走り始めたのです。

これまでに、9種類のストールが生まれましたね。
そもそも、作っている数が少ないのですが、生産した分は、すべて売り切れていきました。

話がいつものようにとびますが、私は神秘家でもあるし、ある意味リアリストでもあると思います。
ニューギニアの古老達の「精霊文化」を文字通りうけとって、共感していますし、宇宙の愛と光を絵に転写するということも、「そう願っている」と言うよりは実際に淡々と作務としてそうしているという感覚です。しかし、目には見えない世界のことは、いつも「信じる」ということと結びつきますし、見えないヴァイブレーションをどうやったら転写できたというのか、科学的に証明しなさいと言われたら、すぐにお手上げです。証明する方法がないというのではなくて、科学的証明が、宇宙の真実だと思っている意識のありかたでは、結局、実相はとらえられないことを知っているからです。(断っておきますが、わたしは地球の科学に敬意を持って信頼しています。それでも、それは宇宙においては発展途上の思想なのです。)しかし、アートという姿であれば、どうにか科学が追いつく前のエネルギーの世界を、実際に人々に感じてもらえるかもしれない。そのためにはどうしたらいいか、リアルに工夫を重ねてもいます。

旧来の言葉で言うならば、私の絵は祈りのようなものだとも言えるのかもしれません。

しかし絵の本質はなにかと問われたら、最終的には「ご想像におまかせします。」としか、いいようがない。

いいようがないのですが、やはり、ストールも作品として作っている以上、一点一点に、特別な光が宿っていきます。
そして、それを身につけて街をあるく人が増えると、街もまた変化していきます。

そのことを大事にしながら、それでも、一点ものの絵とは違う、製品として、ストールをもう少し広めていきたい。

去年はそういう思いで、製作の全体の管理運営を外部に任せることを決めました。

俄然、加藤繊維の森親子は張り切ってくれましたね。
特別な新素材を使おうといいだしてくれました。運営委員会も、専用ページまでつくって、たくさんの人にこれを広げていきましょうと大きな笑顔を見せてくれました。

わたしは、いつものように瞑想のあとで得た直観を参考に、ストールに載せるべきエネルギーを受けとる場所を探しました。

それが、沖ノ島を中心とする宗像の場所でした。沖ノ島には上陸することができないので、その手前の大島でエネルギーワークをすることにしました。
下見に行って、滞在して、女神達のエネルギーを感じて。もう、なんだかずいぶん昔のことのようです。

とても鮮やかな原画を得られて、順調に製作は進んでいくとおもわれました。
クラウドファンディングの方法で、事前予約を受け付けたので、皆さんもたくさん注文してくださり、あとはお届けするばかりだと思っていました。

しかし、、加藤繊維の森親子が見つけてくれたコラーゲンを原料とした繊維には、まだ未知の性質があって、印刷手法との兼ね合いから、いくつものやり直しの工程が発生しました。あまりに専門的になるので、すべては書きませんが、問題にぶちあたるたびに、解決策を練り、それを実行し、よいものにしていこうという姿勢を製作チームはいつも見せてくれました。「採算度外視」という文字があたまに浮かびました。どの道でも、専門家・プロフェッショナルになるには、追求と採算のバランスを見極めることを先輩や師匠からたたき込まれます。だけど、結局、ものづくりが好きな人たちは、利益が最終的なモチベーションにはなりえないのかもしれません。どうしたって、いいものを届けたい。今回は、プリントのあとにいくつもの工程が発生しました。その最後の仕上げの段階で見せてくれた森親子の姿は、ピュアそのものでした。ああ、結局わたしたちは、地球に根っこを生やして、ものをつくっていくばかりなんだなあ。そう思いながら、じーんとしてしまいました。繊維の現場、印刷の現場、いったりきたりの行程の中で、わたしはいつもよりも色調整に時間と手間をかけられました。そして、気づいた頃には、最初のプロトタイプとはまったく違うストールが出来上がっていました。

そして、ふと思ったのです。「あ、これは、あの夏に大島で感じた風だ。」って。

そんな諸々があって、結局2017年度版アートストールは、材料を使い切ったとしても、250本くらいしか作れません。
もちろん、すでにお申し込みいただいているかたの分はありますが、あまりにもお買い得なお値段と、コレクターズアイテムともいえるストールになりましたので、まだご注文なさってないかたも、無くなる前に、どうぞ手に入れてください。

絵を描くこと。
自分が受信機だとして、一番ピュアで愛に満ちたところだけを、形にうつすこと。
生きていることを受け入れて、見えてる世界を愛すること。
かたちのないものに、精神の軸足をおきながら。

きっと、どんな人も、そうやってご自分の魂を輝かせているのだと思います。
そんな素晴らしいあなたとおなじように、私も淡々と。

また、個展やアートレッスンでお会いしましょうね。
ありがとうございます。

今日も宇宙に満ちる愛と共に。
ワールドピース!